第6回 LIXIL国際大学建築コンペ

竣工レポート

デンマーク王立芸術アカデミー「INFINITE FIELD」竣工レポート

次世代サステナブル住宅の技術を模索、検証する「LIXIL国際大学建築コンペ」。LIXIL住生活財団が主催する世界の建築系大学を対象にした実施コンペです。第6回目のテーマは「ライトウェイトな快適さ」。北海道大樹町にある研究施設「メム メドウズ」の敷地に世界10カ国12校の参加大学から組み立て・移動可能な軽い住居の提案を募り、2016年7月20日に開催された公開審査会の結果、デンマーク王立芸術アカデミー(デンマーク)の「INFINITE FIELD」が最優秀案に選ばれました。審査委員は隈研吾氏、野城智也氏、新谷眞人氏、塚本由晴氏、デイナ・バントロック氏。学生メンバーが来日し、隈研吾建築都市設計事務所の協力のもと、日本の文化に触れながら実施設計を行いました。地元の高橋工務店が施工を担当してメム メドウズに建設、2016年10月21日に行われた竣工式でお披露目されました。

竣工式後に「INFINITE FIELD」の前で撮影されたデンマーク王立芸術アカデミーチームと第6回LIXIL国際大学建築建築コンペ審査委員による集合写真。
INFINITE FIELD

自然との対話を生み出す家(審査委員長 隈研吾氏)

建築であり、家具であり、洋服であり、さまざまな捉え方ができるところに魅力を感じ最優秀案に選びました。そして今日、竣工した姿を見て、今までとは質の違うものができたなという印象で、今後ここでどういった生活が展開されるのかとても楽しみです。また、ドローイングの時は素材であったりどちらかと言うと北欧テイストが強かったのですが、建設にあたり地場産のカラマツ材が床に使われたり、ジャパニーズフレイバーが追加され、北欧風と日本風がミックスされた建物になりました。建築は場所に影響されるものですからそのよさが出ていて面白いですね。今回が6つ目の建物となり、バラエティが出てきてこのコンペも新しいフェーズへと移行していく気がします。


INFINITE FIELD
設 計
指導教官
学 生

設計監修
デンマーク王立芸術アカデミー
Anders Brix
Benjamin Tan, Jesse Thomas, Scarlett Hessian,
Konstantinos Fetsis, Bas Spaanderman, Kazumasa Takada
隈研吾建築都市設計事務所、
オーク構造設計事務所(構造設計監修)

「INFINITE FIELD」 コンセプト

軽やかさと可動性を持つ建築

2016年10月、北海道大樹町メム メドウズにて第6回LIXIL国際大学建築コンペは終わりを迎えた。
「INFINITE FIELD」は、都市の内に失われてしまった自然と人の繋がりを再考、再構築するというLIXIL財団の意志を反映したものである。

本コンペの要項は、矛盾する建築的挑戦を要求するものであった。実際に移動可能であるために軽量でありながらも、北海道の厳しく変化に富む自然環境に対する庇護、つまりは十分な建築的強度を達成しなくてはならないというものであり、その空間は同時に現象学的な意味合いにおける軽やかさと快適さを持つことが要求されていた。これらのテーマに対し私たちは、大樹町の壮大な自然環境とシームレスに接続することにより、人と自然との交流を促進する空間のあり方を模索した。その中で北海道の自然現象はデザインの各段階において多くをチームに語ってくれた。冬に広がる雪原とその反射光は計画をランドスケープと結び付け、風を防ぐために建築は方向性を持ち、ダイヤモンドダストをはじめとする視覚的現象への着目など、すべては敷地の特性によるものである。
地面より持ち上げられた床は、この地域の平均積雪量の高さに設定されており、冬には雪原と一体化し、そこからは360度の景色を眺望できる。床につくり付けられた背もたれは、これを起点に座ったり、寝転んだり、中心の火鉢を囲んで会話を楽しんだりと、さまざまな体勢で人びとが滞在することを可能にする。また、主構造となる3本の柱は、空間を覆う一連のテキスタイルを支持するものである。外部には防水のための素材が使用され、内部にはより触覚的で柔らかな素材が用いられている。そして、その独特な形状は鉄製のリングにより形成されている。
本計画では硬い壁により空間を分節することを避け、層状に構成されるテキスタイルを用いたグラデーショナルな空間とし、これにより縁側空間を拡張することを試みた。また、この敷地において周囲の豊かな自然を内部の空間体験に還元したいという欲求は疑いようもないものであるが、それは内部の熱環境に関する要求と矛盾することとなる。しかし、そうした課題に対してもこのテキスタイルによる幾重ものレイヤーを衣服のように纏う空間の構成が回答となった。寒い季節には異なる度合いの断熱性能を持つ布により人びとを包み込み、暑い時期にはそれらが開放されることで涼と眺望を得ることができる。こうした布による構成は、滞在者自らが周辺環境との関係性を調整することを可能にする。

最後に、本コンペの特徴として初期アイデアから実際に建設するまでの過程を学生の手により行う機会を提供している点が挙げられる。チームはコンペ時のアイデアから案を展開し、実際に建設する際に問われる諸問題に対し調整を加えてきた。予算との兼ね合いや、限られた時間、構造的な課題などさまざまな問題に対処する中で案は成熟し発展してきた。その間に、構造は強烈な風に対応するためにより大きく強いものとなり、背もたれなどの家具的な要素を再調整し、素材も敷地の特性に合わせ変更が加えられた。この過程は、貴重な体験と教訓を私たちに与えてくれる得難いものとなった。隈研吾建築都市設計事務所をはじめ、オーク構造設計事務所、さらには北海道で建設に携わっていただいた方々の協力を経て、メム メドウズに作品は竣工した。
(デンマーク王立芸術アカデミー 学生チーム6名)

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