第5回 LIXIL国際大学建築コンペ

竣工レポート

オスロ建築大学デザイン大学 「INVERTED HOUSE」 竣工レポート

次世代サステナブル住宅の技術を模索、検証する「LIXIL国際大学建築コンペ」。LIXIL住生活財団が主催する世界の建築系大学を対象にした実施コンペです。第5回目のテーマは「厳しい寒さを楽しむ家」。北海道大樹町にある研究施設「メム メドウズ」の敷地に世界11カ国12校の参加大学から提案を募りました。
2015年4月21日に開催された公開審査会の結果、オスロ建築デザイン大学の「INVERTEDHOUSE」が最優秀案に選ばれました。審査委員は隈研吾氏、野城智也氏、デイナ・バントロック氏。5月から学生メンバーが来日し、8週間かけて日本の文化に触れながら、隈研吾建築都市設計事務所の協力のもと実施設計を行いました。またその後も、学生メンバーのひとりであるLaura Cristeaさんは日本に残り、大樹町での生活を送りながら建設過程を見守りました。施工は地元の高橋工務店が担当。約5カ月の工期を経て2016年1月21日に竣工しました。

INVERTED HOUSE

自然との対話を生み出す家 (審査委員長 隈研吾氏)

「INVERTED HOUSE」は、これまでと全く異なるアプローチで建築がつくられています。通常、建築をつくる場合、覆うことで空間を構成していきます。しかし、オスロ建築デザイン大学の提案は、建築の骨となる壁をつくり、その壁を手掛かりに居住空間がほぼ外部に配置されています。ここは自然と人間が対話するための場所になっていて、屋根の傾斜や床レベルに変化をつけることで、自然との距離をコントロールし、彼らはその対話をクリエイトすることに挑戦したのです。第5回のコンペテーマは「厳しい寒さを楽しむ家」ですが、結果的に、寒さだけでなく、大樹町の時間の変化であったり、四季の変化をエンジョイできる、従来の住宅を越えた体験ができます。また、彼らのこだわりの強さにも驚かされました。型枠として敢えて古い材を使うことでコンクリートの壁に表情を持たせたり、割り方も均質にはしていません。屋根や床、柱の木も自分たちの手で塗装されていて、こうしたこだわりによってヒューマンな暖かい仕上がりになっていると思います。


INVERTED HOUSE
設 計
指導教官
学 生

設計監修
オスロ建築デザイン大学
Raphael Zuber,Neven Fuchs,Thomas McQuillan
Laura Cristea,Mari Hellum,
Stefan Hurrell,Niklas Lenander
隈研吾建築都市設計事務所、
オーク構造設計事務所(構造設計監修)

「INVERTED HOUSE」 コンセプト

私たちは、建築のあり方を根本から考え直し、建築と自然との間に新たな関係性を生み出すことを試みた。一般的な建築では、内部と外部の間に両者を隔てる強固な仕切りが設けられ、この仕切りによって外部から遮断されることで、内部の快適さが保たれます。しかし、 私たちが提案する「INVERTEDHOUSE」は、この考え方に異議を唱え、一般的な住宅を反転させ、外界の「厳しさ」を取り込むことで、住宅が周辺環境に対する住人の感覚を変える道具になり得るだろうと考えた。「INVERTED HOUSE」における主な居住スペースは、ほぼ外部に配置されている。内部空間を最小限に抑え、屋根や地面から持ち上げられた床により保護されつつも、開放感のある外部空間により、さまざまな自然との関係性をつくり出している。この住宅には、私たちが住み慣れたスカンジナビアの簡素さの中に、日本の伝統的な数寄屋づくりの雰囲気を見出し、本来の自然との親密さとはどのようなものかを明示している。

「INVERTED HOUSE」の中心には交差する2枚の壁が配置され、この十字壁によって4つの空間が定義される。建物へは、ひとつ目の空間となるガーデンルームを通ってアクセスする。冬の間にこの空間に積もった雪は、南側の高い壁がつくる陰により、春の終わりまで溶け残る。ここからメインの扉を抜けるとアウトサイドルームへと続く。高さの異なる木造の床は、暖炉へと続いており、傾斜の緩い大きな屋根が周囲と夕日に向かって伸びている。その隣には急勾配の屋根によって強風から守られたキッチンがある。十字壁周辺の細い通路は、唯一の内部空間であるインサイドルームへと続いている。この部屋は狭く暗い空間であり、オープン式の暖炉によって温められる。また、低い位置にある横長窓からは外のガーデンルームを眺めることができ、冬には雪を、夏には花々を楽しめる。その反対側には、最もプライベートな空間として、浴槽が壁を挟んで屋根のすぐ下に隠れている。スリーピングルームは朝日の方角を向いており、まるで雪の上に浮かんでいるような空間である。また、屋根はメム メドウズの大きな空に向かって開かれている。

「INVERTED HOUSE」は、あるひとつのコンセプトを強く反映した建築というよりは、多くの要素からなる繊細なシステムとして創造した。壁、床、屋根、柱、階段といった各部材については、建物全体、さらには敷地の外界との比率や関係性を慎重に考慮することで構成されている。
(オスロ建築デザイン大学 学生チーム4名、翻訳:牧尾晴喜)

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